絵の物語性


ダ・ヴィンチが描いた『最後の晩餐』。
それは、イエス・キリストが「汝らの中の一人,我れを売らん」 と、この中の一人が自分を裏切るだろうと告げる瞬間の、12人の弟子たちの 驚きと心の動揺をテーマにしたもので、古くから宗教画として、多く描かれてきた。
最後の晩餐とは、「過ぎこしの祭」というユダヤの祭日に、 もうイエスの逮捕は時間の問題といった状況のなか、イエスと弟子が最後の食事をともにした時のこと。
イエスは、パンとワインを自らの体と血にたとえて、弟子たちに分け与えたという。
ダ・ヴィンチは、イエスを中央において裏切り者がいるという言葉が、驚きとなって、 波のように弟子たちに伝わっていく様子を、遠近法を使ってみごとに描いている。
それぞれ見ていくと・・・・
左から4人目のペテロ、彼は激しい性格だったというが、右手にナイフをもって、 今まさに裏切り者にふりかかろうとしている。 そして、横のヨハネに誰が裏切るのかイエスにきいてくれと聞いているようだ。
大ヤコブは両手を広げて驚き、 右から4人目のフィリポは、イエスに対して私ではないとでもいっているかのように 描かれている。 マタイとタダイ・シモンは、それぞれ一体誰だろうと目を見合わせて、驚いている。
そして裏切るユダ。 左から5人目で、イエスにたいしてややのけぞる姿で、右手には銭入れ袋をしっかりもっている。 思わず塩入れをひっくり返してしまっている。
イエスの予言にざわつく12使徒の様子を、性格を考えて表現しているところが、さすがというべき。 それぞれの手の動きをみるだけでも、 イメージはふくらんでいく。