20年におよぶ修復

<修復前のイエス> <修復後のイエス>

1999年5月、20年にもおよぶ修復作業で、『最後の晩餐』は甦った。
バチカンのシスティナ礼拝堂にある、ミケランジェロの『最後の審判』の修復が13年。 絵の大きさを考えると、この20年の作業がいかに困難だったかがわかる。

今回の修復は洗浄を中心におこなわれた。 洗浄といっても、ただ洗うというのではない。 絵の表面につもったり、こびりついたカビやほこりを洗浄液に浸した筆でぬぐい、 あとで、和紙で吸い取るという方法だった。 他にも、 過去の洗浄で上塗りされた絵の具や、絵の具を固定させるために使ったニカワなどを丁寧に 取り除いていった。
実は、壁画の損傷が始まった当時から、いろいろな形で保存と修復がくりかえされてきた。 なかでも、18Cのミケランジェロ・ベロッティによるものは、大々的に行われた。 が、これには、大きな問題があった。 彼は、カビを取り除いたあと、絵の何ヶ所かを自分の趣味で書き直してしまったのだ。

根気強い洗浄の結果、オリジナルの絵の具が、完全に剥離していて何も残っていない個所もあったし、 後の人たちの手で、描き直されてしまった個所もあった。 そういうところは、過去に見た人の証言を書物から見つけ出した。 また、数多く描かれている模写画から分析をくりかえした。 こうして、気の遠くなるなる作業と、科学的な分析の結果、修復は完成したのである。

その結果、オリジナルではイエスの口がわずかに開いていることが分かった。 また、奥行きをだすためか壁に長方形の板のようなものが描かれていたが、これが タペストリーで、その柄もわずかだが、花の模様があることが分かった。 タペストリーをつるすフックまでもが、きちんと描かれていたのである。