サンジャック塔


赤い線が4つの巡礼ルート

工事中の看板が...



12世紀、キリスト教世界は空前の巡礼ブーム。

エルサレムやバチカンと並んで、スペインへの巡礼も盛り上がった。当時 スペインではイスラム教徒に征服された国土を取り戻そうとする、 レコンキスタが主流になり、巡礼に拍車がかかっていたのである。

巡礼地は、 12使徒の中で最初の殉教者となった、聖ヤコブを祭るサンティヤゴ・デ・コンポステーラ。 今も巡礼者は多いが、当時、 フランスやドイツから多い時には50万人もの人々が、聖地をめざしてひたすら歩いた。 巡礼の途中に聖人の遺骨や遺品にふれて、自分の贖罪を願うのが常だったという。

サンティヤゴ・デ・コンポステーラへは、4つのルートがある。 「トゥールの道」「リモージュの道」「ル・ピュイの道」「トゥルーズの道」 。
ここサンジャック塔は、「トゥールの道」の重要な地点となっていた。
パリからサンティアゴまでは1600キロ以上の道のり。 トゥールの道は、かのジャンヌ・ダルクゆかりの地オルレアンを起点としているが、 パリ以北から来た人は、まずはサンジャック塔に寄って礼拝し、 一息ついて、食事の施しを受け、 次のオルレアンを目指したという。

サンジャックとは、”肉屋街の聖ヤコブ”という意味を持っている。 この周辺に肉屋や臓物屋が多かったからという説が有力なようだ。 今は聖堂は焼失してしまい、高さ52メートルの鐘楼だけが残っているが、今回は修復中でまわりは金網、 全体が見れずに残念。 もう一つ、歴史の中でここは重要な役目をはたした。 1648年、塔の頂上で、パスカルが気圧の実験を行った。 その流れか、現在ここは気象観測所となっている。